学びの蹊(こみち)-ゲーム理論|学び紹介アニメーション|経済学部|成蹊大学

学びの蹊(こみち)-ゲーム理論|学び紹介アニメーション|経済学部|成蹊大学
いま、宝石を盗んだ罪で2人の囚人SとTが取り調べを受けています。検事が余罪を調べたところ、SとTは数週間前に発生した銀行強盗にも関わっていた可能性が高いことが分かっています。しかし、決定的な証拠が見つからず、2人は一向に口を割ろうとしません。
そこで検事は2人に司法取引を持ちかけました。取引の条件は、次の通りです。
・このまま2人とも黙秘をした場合、刑期は3年
・2人とも自白をした場合、刑期は10年
・どちらか1人のみが自白をした場合、自白した方は刑期1年、黙秘をした方は刑期15年
検事に取り調べを受ける囚人Sと囚人T
数週間前に発生した銀行強盗にも
関わっていた可能性
検事は2人に司法取引を持ちかけた
このまま2人とも黙秘をした場合、
刑期は3年
2人とも自白をした場合、
刑期は10年
どちらか1人のみが自白をした場合、
自白した方は刑期1年、
黙秘をした方は刑期15年
さて、このような状況では、2人はどのような選択をするでしょうか。
考える前に、条件を整理しておきましょう。
・2人は別々の部屋で取り調べを受けていて、お互いに相談することはできません。
・2人は少しでも自分の刑期を短くしたいと考えています。
・2人は仲間がどう出るか考えを巡らせ、決断をします。
2人は別々の部屋で取り調べを受けていて、お互いに相談することができない
2人は少しでも自分の刑期を短くしたいと
考えている
2人は仲間がどう出るか考えを巡らせている
さぁ、もしあなたが囚人Sだった場合、どのような選択をするでしょうか?仲間である囚人Tのために黙秘するか、はたまた裏切って自白するか…。ここで動画を止めて、少しの間考えてみてください。
いかがだったでしょうか。囚人SとTの思考を表にして、仲間の選択に対してどのような選択を取るべきか見てみましょう。
・囚人Tが黙秘すると仮定した場合、SはTと同じく黙秘するよりも自分だけ自白した方が刑期は短くなるので、自白をした方が良さそうです。
・囚人Tが自白すると仮定した場合、Sは自分だけが黙秘をすると自分の刑期が長くなってしまうので、やはり自白をした方が良さそうです。
したがって、囚人Tが何をしようが囚人Sにとっては黙秘より「自白」をする方が刑期が短くなるので、囚人Sは自白をすべきです。これは囚人Tの立場に立っても同じことが言えるので結局2人は「自白」を選択することになります。
もしあなたが囚人Sだった場合、
どのような選択をするでしょうか?
囚人Tと囚人Sが黙秘をした場合と
自白をした場合の表
囚人Tが黙秘すると仮定した場合、
囚人Sは自白した方が良い
囚人Tが自白すると仮定した場合、
やはり囚人Sは自白した方が良い
囚人Tが何をしようが囚人Sにとっては
黙秘より「自白」をする方が刑期が
短くなる
囚人Tの立場でも同じなので結局2人は
「自白」を選択することになる
囚人2人の思考や決断をゲーム理論に基づいて整理してみましょう。
この状況は、ゲーム理論において、次のように説明できます。ゲームの「プレイヤー」は2人の囚人SとT、各プレイヤーが選ぶことができる「戦略」は「黙秘」と「自白」の2つ、プレイヤーの「利得」、つまり得点は刑期の短さを意味しますこのゲームにおいて、各プレイヤーは、自分の2つの戦略「黙秘」と「自白」を比べ、他のプレイヤーがどちらの戦略を選ぼうが、「自白」という戦略が自分の利得を大きくすることに気が付きました。ゲーム理論では、このような戦略を「強支配戦略」と呼びます。
強支配戦略とは、プレイヤーが「個人としての合理性」を最大限に追求した行動方法と言えます。
ゲーム理論
囚人Tと囚人Sが黙秘をした場合と
自白をした場合の表
「自白」という戦略が自分の利得を
大きくする
強支配戦略
別々の場所で取り調べを受ける2人の囚人
悩む2人の囚人
2人の囚人はどちらも自白する
さて、各囚人が「個人としての合理性」を追求したときに訪れる状態は、2人にとって合理的な状態になっているでしょうか。
先ほどの表で確認できるように、2人が揃って黙秘をすれば、2人とも刑期は3年で済みます。そしてこれこそが「2人としての合理性」と言える状態です。ところが、各囚人が自らの刑期を短くしようと自白を選ぶと、刑期は2人とも10年になってしまいます。つまり、各囚人が「個人としての合理性」を追求すると、「全体としての合理性」が実現されないのです。
個人としての合理性
2人が揃って黙秘した場合
2人が揃って自白した場合
各囚人が「個人としての合理性」を追求
「全体としての合理性」が実現されない
この状況は、ゲーム理論で「囚人のジレンマ」として知られています。
この囚人のジレンマとまったく同じ構造を持つゲームが、企業間の価格競争です。先ほどと同様に表、ゲーム理論の用語で「利得表」と言いますが、これを見ながら考えていきましょう。ゲームのプレイヤーは似たような製品を販売していて、ライバル関係にあるA社とB社、各プレイヤーが選ぶ戦略は販売価格を「高価格」とするか「低価格」とするかです。また、各プレイヤーの利得は利潤を表します。A社とB社の価格が違うとき、低価格で販売する企業には需要が集中して莫大な利益をもたらす一方、高価格で販売する企業は製品が売れずに損失を被る、という特徴が利得表に反映されています。
囚人のジレンマ
企業間の価格競争
利得表
ライバル関係にあるA社とB社
販売価格を「高価格」とする
販売価格を「低価格」とする
価格が違うとき、低価格で販売する企業には莫大な利益がもたらされる
高価格で販売する企業は製品が売れずに
損失を被る
この価格競争のゲームにおいては、「低価格」が各社にとっての強支配戦略になります。このことをA社の視点から説明しましょう。
まず、ライバルのB社が「高価格」を付けるなら、A社は「高価格」よりも「低価格」を付ける方が利潤を大きくできます。また、B社が「低価格」を付ける場合も、A社は「高価格」よりも「低価格」を付ける方が利潤を大きくできます。よって、A社にとって「低価格」は強支配戦略です。同じように、B社にとっても「低価格」は強支配戦略です。
ところが、2社がともに「個人としての合理性」を追求して強支配戦略である「低価格」戦略を選択すると、両社が揃って高価格戦略を選択した状態よりも各社の利潤は下がってしまいます。なぜならば、顧客シェアは何も変わらず、価格だけが下がるからです。ここでは、両者が揃って「高価格」戦略を選ぶ状態が「全体としての合理性」なのですが、その状態は各社の「個人としての合理性」からは実現されません。
「低価格」が各社にとっての強支配戦略
A社の視点
ライバルのB社が「高価格」を付けた場合
ライバルのB社が「低価格」を付けた場合
A社にとっては「低価格」が強支配戦略
2社がともに強支配戦略である
「低価格」戦略を選択した場合
「全体としての合理性」である両者が
「高価格」戦略を選ぶ状態は実現されない
「競争社会」とも呼ばれる現代社会には、企業間の「価格競争」の他にもさまざまな競争が存在します。そこで、競争の結末を予想したり、競争の構造を分析したりすることを目的に、20世紀中ごろにゲーム理論が誕生しました。
成蹊大学で「ゲーム理論」を担当する吉田 由寛教授はこう語ります。「自由と競争は、コインの表と裏の関係にある。人々が自由に行動できる社会では、人々の利害は衝突し、必然的に競争が発生するからである。したがって、自由な社会について知るためには、競争について知る必要があり、それにはゲーム理論が役に立つ」
ゲーム理論は、今や経済現象に留まらず、現代社会のさまざまな現象を理解する上で必須の学問になっています。
企業間の「価格競争」などの
さまざまな競争
競争結末の予想や競争構造の分析
20世紀中ごろにゲーム理論が誕生
成蹊大学で学ぶ「ゲーム理論」
自由と競争は、コインの表と裏の関係
ゲーム理論は現代社会のさまざまな現象を
理解する上で必須の学問
ちなみに、先ほどの価格競争のケースですが、実は消費者まで含めた社会全体で考えると、各社が低価格を付ける状態が、ある意味で社会全体にとって効率的な状態となります。つまり、価格競争のケースでは、A社とB社を囚人のジレンマに陥らせることが、消費者を含む社会全体にとって望ましいことになります。
このように、競争を生き抜こうとしているプレイヤーにとってはジレンマだったものが、実は健全な社会経済を実現するための鍵になっていることがあります。
価格競争における囚人のジレンマ
健全な社会経済を実現
さて、これまでご紹介してきた囚人のジレンマとゲーム理論。いかがだったでしょうか。
現代社会でプレイヤーとして生きるあなたにとって、これらを深く学ぶことはきっとこの先の人生の大きな助けになるはず。
さぁ、成蹊大学 経済学部 経済数理学科であなたもゲーム理論について学びましょう!
ゲーム理論を学ぶということ
経済数理学科であなたもゲーム理論について学びましょう!
本質を見抜く目を身につけよう
いかがだったでしょうか。ゲーム理論も「囚人のジレンマ」も実社会で活用できるものです。また、何よりもそれらの学問の考え方を吸収することで、物事の本質を見抜く確かな洞察力が身につくでしょう。「自分には難しいかも…」と思っても、心配することはありません。成蹊大学には、一緒に考え、あなたの学びをサポートしてくれる教員がたくさんいます。学問自体を楽しんで、学問的な発見・気付きの感動をたくさん経験してください。
経済学部の学び 少人数教育のゼミから
経済数理学科 ゼミリスト
現代経済学科 ゼミリスト
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