半世紀の時を経て、新宿を見つめ直す【生きられた新宿展 ギャラリートーク#1】|工学院大学
半世紀の時を経て、新宿を見つめ直す【生きられた新宿展 ギャラリートーク#1】
工学院大学
2026年3月31日 11:30
1975年にニューヨーク近代美術館で『生きられた新宿』と題する企画展が開催されて今年で半世紀。当時において、政治・文化・流行の先端を走る新宿の活気を伝える展示だったと語り継がれています。
2025年10月、同企画展を現代的な視点から再現しようと、新宿にキャンパスを構える工学院大学で開催されたのが、「
生きられた新宿 都市の経験 1975-2025」展
です。
そして同展を記念して、10月30日に
【工学院大学会場ギャラリートーク#1 都市の断片化、漂流、踊り場を巡って】が開催されました。
ギャラリートークでは、工学院大学
建築デザイン学科の樫原研究室
をはじめ、東京大学・早稲田大学、東京理科大学の各研究室が参加し、
新宿という都市を多角的に読み解く試みについて発表を行いました。
あわせて、樫原徹教授、東京理科大学の伊藤香織教授、東京大学の中島直人教授によるトークセッションを実施し、各研究の視点や都市の捉え方について議論が交わされました。
今回のnoteでは、その時の様子を紹介します。
「漂流」する瞬間にこそ、「生きられた経験」がある
樫原研究室の展示作品のテーマは、「生きられた街」です。
「多くの人が集まる新宿では、人々はモノを購入したり、お腹を満たすといった欲望を実現するためにお金を使う。この一連の流れは資本主義に従属した行動なのではないか。そこに「生きられた経験」というものは存在しないのではないか。」
樫原研究室では、
こうした疑問から通勤や通学といった枠組みから離れた自由な立場で、さらにお金を使わずに新宿を漂流してみようという試みを行いました。
工学院大学建築学科デザイン学科 樫原徹教授
樫原教授はその意図について、「お金の力が関わらない、純粋な欲望に突き動かされて街を漂流する瞬間にこそ、『生きられた経験』があるのではないか。」と述べました。
そのような仮説から、樫原研究室のメンバーは、
1円もお金を持たずにオリエンテーリングしながら街をさまよう『新宿アーバンオリエンテーションwithゼロ円』という新宿を漂流する遊びを実践。
ミッションをクリアするために新宿を歩き、移動経路をGPSで記録しました。その記録と、ミッションクリア時に撮影した写真を組み合わせ、マップ上に表現したポスターを制作しました。
学生たちからは、新宿の街を漂流する体験について、さまざまな感想が寄せられ、
「新宿の街で眠れる場所を探して写真を撮る、大声を出せる場所を見つけて実際に声を出してみる。そうしたミッションを通して街を漂流することで、新宿における身体的な経験を深く体感できたと思います」「地図を持たずに新宿を漂流するという経験は、スマートフォンを頼りに街を歩くのが当たり前の私たち世代にとって、新しい取り組みでした」
といった気づきが語られました。
また、樫原研究室は、今回の企画展に先立ち、「バージョン0」として2025年6月に学内展示を行い、その際に制作した作品についても紹介しました。
作品の詳細については、以下よりご覧ください。
続いて、東京大学・早稲田大学、東京理科大学の各研究室による発表がありました。
東京大学・早稲田大学の合同研究室は目的地と目的地の間を滞留空間=「踊り場」と定義。
新宿の踊り場を調査・発表しました。
東京理科大学の研究室は、新宿に抱くイメージを基にエリア内で数千枚もの画像を撮影。
象徴的な画像をマップ上の撮影場所に示しました。
「漂流」は、無意識と意識の中間を意識した取り組み
左から
伊藤教授(東京理科大学)、樫原教授(工学院大学)、中島教授(東京大学)
最後は、樫原徹教授、東京理科大学の伊藤香織教授、東京大学の中島直人教授によるトークセッションが行われました。
セッションでは、「50年前の新宿は、都市が発展していく“建設の時代”にあったこと」「現在は、センサーやメディアを介さなければ都市を直接的に経験することが難しくなっていること」など、時代による都市経験の変化について意見が交わされました。
そうした議論を踏まえ、樫原教授は、新宿を捉える視点として「無意識と意識」「メタファーとデータ」「主観と客観」という三つの軸を提示。その中で、
樫原研究室の「漂流」は、無意識と意識のあいだに位置する体験を意図した取り組みだったと整理しました。
また、現在ではコンピューターや地図技術を活用することで、歩いた経路や撮影した写真といった主観的な経験を可視化できるようになった点にも触れ、
「都市を捉える方法そのものが、50年前とは大きく変わっている」とまとめました。
異なるテーマで作品制作に取り組んだ他大学の研究室の発表や議論を通して、新宿という都市に対する多様な捉え方に触れ、考えを深める機会となりました。
1975年、2025年と、時代を経て新宿を捉える視点や環境、社会も大きく変貌してきました。これからの50年後、新宿はどのように捉えられていくのだろう——過去から現在、そして未来へと思いを馳せるきっかけとなるギャラリートークでした。
樫原研究室のみなさん
お疲れ様でした!
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