スペクトル分類 - Wikipedia
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この項目では、
恒星
のスペクトル分類について説明しています。
小惑星
のスペクトル分類については「
小惑星のスペクトル分類
」をご覧ください。
HR図
スペクトル型
YSO
T Tauri型星
Herbig Ae/Be型星
褐色矮星
準褐色矮星
白色
矮星
準矮星
主系列星
準巨星
巨星
バリウム星
赤色
巨星
青色
巨星
輝巨星
超巨星
赤色
超巨星
LBV
WR型星
極超巨星
スペクトル分類
(スペクトルぶんるい、
spectral classification
)とは、
恒星
の分類法の一つである。スペクトル分類によって細分された星のタイプを
スペクトル型
spectral type
)と呼ぶ
。恒星から放射された
電磁波
を捉え、
スペクトル
を観察することによって分類する。恒星のスペクトルはその表面温度や化学組成により変わる。表面温度を元にして分類する狭義のスペクトル型(ハーバード型
)と、星の本来の明るさを示す光度階級 (luminosity class) があり、両者を合わせて2次元的に分類する
MK分類
が広く用いられている。これは、この分類を提唱した天文学者の
ウィリアム・ウィルソン・モーガン
フィリップ・チャイルズ・キーナン
英語版
の名前に由来する
恒星のスペクトルのそれぞれの線は、特定の
元素
分子
の存在を示しており、その特徴の強度はそれらの存在量を示している。異なるスペクトル線の強度は主に恒星の
光球
の温度に左右されるが、いくつかの場合では元素の実際の存在量の違いを反映している場合がある。高温の天体では水素の吸収線が、低温の天体ではその他の重元素による吸収線が強く現れる傾向にある。また特に低温の星では、原子に加えて
分子
の吸収線も見られるようになる
ほとんどの星は、MK分類を用いて分類されている。これは
および
を用いた分類を用いており、O型が最も高温で、M型が最も低温である
。アルファベットの順番がバラバラであるのは、スペクトル型と天体の温度が対応していると判明したのがアルファベット順の分類が開発された後であり、後に温度の順番に並べ替えて現在の様式に整理されたという歴史的な経緯に由来する
。それぞれの文字の分類はさらに
から
を用いて細分化され、この中では0が最も高温で、9が最も低温であることを示す
。例えば、A8、A9、F0、F1 という分類は高温から低温になるように並んでいる。この分類法は、古典的な恒星の分類には当てはまらないその他の星や恒星に似た天体を分類できるように拡張されている。例えば
白色矮星
を表す
炭素星
を表す
などが加えられた。また、褐色矮星などの低温の天体のスペクトルとして、
が導入されている
MK分類では
ローマ数字
を用いた
光度階級
も合わせて用いられており、これは恒星のスペクトルにおける特定の吸収線の線幅に基づいて定められている。線幅は恒星大気の密度によって変化するため、恒星が矮星(
主系列星
)か
巨星
であるかを区別することができる。光度階級では、極超巨星に対しては
もしくは
Ia+
、超巨星に対しては
、明るい巨星に対しては
II
、通常の巨星に対しては
III
、準巨星に対しては
IV
、主系列星に対しては
、準矮星に対しては
sd
もしくは
VI
、そして白色矮星に対しては
もしくは
VII
が割り当てられている
。この記法をすべて用いた場合の
太陽
のスペクトル型は G2V であり、これは表面温度が 5800
程度の主系列星であることを意味する。
伝統的な色による分類
編集
温度と色の
三角グラフ
伝統的な色の記述は恒星のスペクトルの極大のみを考慮していた。しかし実際には、恒星はスペクトルのすべての範囲で放射をしている
。すべてのスペクトルの色が合わさると白く見えるため
、人間の目が実際に感じる見かけの色は、伝統的な色の記述が示すものよりもずっと明るく見える。この「明度」の特性を考慮すると、単純にスペクトル中で極大となる波長の色を割り当てる方法は、恒星の分類において混乱の元となりうる。薄明かりの中での色とコントラストの錯覚を除けば、緑色や藍色、紫色に見える星は存在しない
赤色矮星
は濃いオレンジ色であるし、
褐色矮星
は文字通りの褐色には見えず、近傍にいる観測者には理論上は薄い灰色に見えると考えられる
10
現在の分類
編集
ハーバード分類に基づきO型からM型まで並べられた恒星
現在の分類体型は、
MK分類
(Morgan–Keenan classification) として知られている
。それぞれの恒星は、従来からあるハーバード分類によるスペクトル型と
、ローマ数字を用いた光度階級
11
が割り当てられ、これが恒星のスペクトル型を構成する。
そのほか、現在の測光システム
12
、例えば
ジョンソンのUBVシステム
などは、
色指数
に基づいた分類となっている。これは、3つやそれ以上の色での
等級
の差の測定を元にしている。これらの数値は、
U-V
B-V
といった表記が用いられ、2つの標準的なフィルターを通した色等級の差を表している。例えばUは紫外線 (Ultraviolet)、Bは青 (Blue)、Vは可視光 (Visual) という風にである
13
注 1
ハーバード分類
編集
ハーバード分類
は、天文学者
アニー・ジャンプ・キャノン
による1次元の分類である
。キャノンは、それまでに存在したアルファベットを用いた分類を並べ直し、単純化した。恒星はそのスペクトルの特徴に応じてアルファベット1文字でグループ分けされ、オプションとして数字で細分化される。
主系列星
の表面温度は約 2000
から 50000 K までの値を取りうるが、より進化した恒星は 100000 K を超える場合もある
14
。物理的には、この分類は恒星大気の温度を示しており、通常は温度が高いものから低いものへの順番で並べられる。
有効温度
15
16
色度
ベガ
基準)
17
18
注 2
質量
注 3
15
19
半径
注 3
15
19
光度
注 3
15
19
水素線
存在割合
20
≥ 30,000 K
16
6.6
30,000
弱い
~0.00003%
10,000–30,000 K
青白
2.1–16
1.8–6.6
25–30,000
中間
0.13%
7,500–10,000 K
1.4–2.1
1.4–1.8
5–25
強い
0.6%
6,000–7,500
黄白
1.04–1.4
1.15–1.4
1.5–5
中間
3%
5,200–6,000 K
0.8–1.04
0.96–1.15
0.6–1.5
弱い
7.6%
3,700–5,200 K
0.45–0.8
0.7–0.96
0.08–0.6
非常に弱い
12.1%
2,400–3,700 K
橙赤
0.08–0.45
0.7
0.08
非常に弱い
76.45%
ヘルツシュプルング・ラッセル図
は恒星の分類と
絶対等級
光度
温度
を関連付ける。
OからMまでのスペクトル型、および後述する他のより特殊な分類は、さらに 0-9 までの
数字
で細分化される。ここで、0が各分類の中で最も高温のものを表す。例えば、A型星の中ではA0の恒星が最も高温で、A9が最も低温である。小数が用いられる場合もあり、例えば
じょうぎ座
のスペクトル型はO9.7である
21
太陽
はG2に分類される
22
従来の色の記述は天文学では伝統的なものであり、白色とみなされるA型星の平均色に対する色を表す。みかけの色の記述は、暗い空にある恒星を肉眼や双眼鏡を用いて観察した際に観測者が見る色に対応している
23
。しかし非常に明るいものを除けば、大部分の恒星は肉眼では色覚が働くには暗すぎるため、白色や青白色に見える。
赤色超巨星
は同じスペクトル型に分類される矮星(主系列星)よりも低温で赤く、また
炭素星
のような特異なスペクトルの特徴を示す恒星はあらゆる黒体よりもずっと赤くなることがある。
ハーバード分類が恒星の表面、もしくは
光球
の温度(より正確にはその有効温度)を示しているという事実は、この分類が開発されるまでは完全には理解されていなかった。しかし、
ヘルツシュプルング・ラッセル図
が初めて定式化された1914年までには、そのことは一般に真実であると考えられていた
24
。1920年に、インドの物理学者
メグナード・サハ
が物理化学の化学反応における平衡状態の熱力学的理論ではよく知られていた化学平衡の式を原子の電離に拡張することにより、電離度を求める方程式(
サハの電離公式
)を導出した。
25
彼はサハの式を
太陽彩層
に適用し、さらに恒星のスペクトルにも応用した
26
その後、
ハーバード大学
の天文学者
セシリア・ペイン=ガポーシュキン
がサハの式を用いて、
O-B-A-F-G-K-M
のスペクトルの順序が実際に温度の順番であることを学位論文の研究の中で示した
27
→詳細は「
セシリア・ペイン=ガポーシュキン
」を参照
スペクトルの分類の順番はそれが温度の順番であることが理解される以前から存在しているものであるため、スペクトル型をB3やA7などのようにさらに細分化する際には、恒星スペクトルの吸収特徴の強度の(主に主観的な)推定に基づいている。その結果として、スペクトル型の細分は数学的に表現できるような均等な間隔で分割されてはいない。
ヤーキスのスペクトル分類
編集
主系列星の疑似カラースペクトルの合成画像
28
ヤーキスのスペクトル分類は、1943年に
ヤーキス天文台
ウィリアム・ウィルソン・モーガン
フィリップ・チャイルズ・キーナン
英語版
エディス・ケルマン
英語版
によって導入された恒星のスペクトル分類のシステムである
29
。提案者らの頭文字を取って
MKK
システムと呼ばれる場合もある。この分類法は2次元的(
温度
光度
)なものであり、恒星の光度に関係する恒星の温度と
表面重力
に敏感な
スペクトル線
に基づいているが、ハーバード分類は表面温度のみに基づいている。その後、1953年には標準星と分類基準のいくつかの改定を経てこの分類法は
MK分類
と命名され
30
、引き続き使用されている。
表面重力が強い高密度の恒星は、スペクトル線の圧力幅が大きくなる。一方、巨星は同じ質量の主系列星よりも半径がずっと大きいため、表面での重力と圧力は小さく、スペクトル線の線幅も小さくなる。そのため、スペクトルの違いは「光度効果」として解釈でき、光度や絶対等級の情報が無くてもスペクトルの調査のみから光度階級を割り当てることが可能となる。
以下の表の通り、多数の光度階級が識別されている
ヤーキスの光度階級
光度階級
説明
0 or Ia
極超巨星
もしくは極めて明るい超巨星
はくちょう座OB2-12
B3-4Ia+
31
Ia
明るい
超巨星
おおいぬ座
B5Ia
32
Iab
中間サイズの明るい超巨星
はくちょう座
F8Iab
33
Ib
暗い超巨星
ペルセウス座
B1Ib
34
II
輝巨星
うさぎ座
G0II
35
III
通常の
巨星
アークトゥルス
K0III
36
IV
準巨星
カシオペヤ座
B0.5IVpe
37
主系列星
(矮星)
アケルナル
B6Vep
34
VI あるいは sd(接頭辞)
準矮星
HD 149382
英語版
sdB5 あるいは B5VI
38
VII あるいは D(接頭辞)
白色矮星
注 4
ヴァン・マーネン星
DZ8
39
光度階級では、隣接した分類の並記も許容されている。例えば、ある恒星は超巨星もしくは輝巨星のいずれかであるという場合もありうるし、準巨星と主系列星の分類の中間に位置しているという場合もありうる。これらの場合、2つの特別な文字が用いられる。
スラッシュ (
) は、その恒星がどちらかの階級に属することを意味する。
ダッシュ (
) は、その恒星が2つの階級の間に位置することを意味する。
例えば、A3-4 III/IV というスペクトル分類の場合、その恒星はスペクトル型がA3とA4の間にあり、巨星もしくは準巨星であることを意味する。
準矮星の分類も同様に用いられる。光度階級 VI は、主系列星よりもわずかに暗い恒星である準矮星に用いられる
40
主系列星と巨星の温度を示す文字は白色矮星に対しては用いられなくなったため、光度階級VIIやそれより大きな数字は白色矮星や高温準矮星に対してはほとんど使用されなくなった。
超巨星以外の光度階級に関しても、時おり
の文字が用いられる場合がある。例えば、典型的な巨星よりもやや暗い巨星に対しては、IIIbという光度階級が与えられることがある
41
光度階級がVの恒星のうち、
ヘリウム
イオン (He II) の
4686 のスペクトル線で強い吸収を示す極端なものには、
Vz
という記号が与えられる。一例は
HD 93129B
である
42
特異なスペクトル
編集
各スペクトル型に対して小文字でさらなる分類体系を用いることで、スペクトルの固有の特徴を表すことができる
43
記号
恒星のスペクトルの特徴
スペクトルの値が不明確
...
不明なスペクトルの特徴が存在する
特殊
comp
複合スペクトル
44
輝線が存在する
44
[e]
禁制線
45
の輝線が存在する
er
輝線の中央が縁よりも弱く「逆転」している
eq
P Cyg プロファイル
を伴った輝線
N III と He II 輝線
f*
IV
4058
が N III
4634 Å、
4640 Å、
4642 Å 線よりも強い
46
f+
N III 線に加え Si IV
4089 Å と
4116 Å の放射もある
46
(f)
N III の放射があり、He II の吸収が存在しないか弱い
(f+)
47
((f))
弱い N III 放射を伴った強い He II の吸収を示す
48
((f*))
47
水素輝線を持つ
ウォルフ・ライエ星
49
ha
水素が吸収でも放射でも見られるウォルフ・ライエ星
49
He wk
弱いヘリウム線
星間吸収の特徴が見られるスペクトル
金属の特徴が強い
44
回転による広い (星雲状の) 吸収が見られる
44
nn
非常に広い吸収の特徴が見られる
neb
星雲のスペクトルが混入している
44
詳細不明な
特異星
注 5
44
pq
新星
のスペクトルに類似した特異なスペクトル
P Cyg プロファイル
細い (鋭い) 吸収線
44
ss
非常に細い線
sh
ガス殻星
の特徴
44
var
スペクトル特性に変動性がある
44
と略記される場合もある)
wl
弱いスペクトル線
44
("w"、"wk" を用いる場合も)
元素記号
その特定の元素の異常に強いスペクトル線を持つ
44
例えば、
はくちょう座59番星
英語版
はスペクトル型 B1.5Vnne に分類される
50
。つまりこの恒星は通常の分類で B1.5V となるスペクトルに、非常に広い吸収線と特定の輝線を持っているということを意味する。
スペクトル分類の歴史
編集
セッキのスペクトル型の指針("152 Schjellerup"は
りょうけん座Y星
を指す)
ハーバード分類での一見奇妙なアルファベットの順番は歴史的な背景に基づくものであり、初期のセッキによる分類法から発展し、物理的な背景の理解が進むにつれて分類法は徐々に修正されていった。
セッキの分類
編集
1860年代から1870年代の間、恒星の分光学者の先駆者である
アンジェロ・セッキ
が、観測されたスペクトルを分類するために独自の分類を考案した。1866年までに、セッキは以下の表に示すIからIIIまでの3つの恒星のスペクトルの分類を開発した
51
52
53
1890年代後半、セッキによるスペクトルの分類法はハーバード分類に取って代わられるようになった
51
53
54
分類番号
セッキの分類の説明
Secchi class I
広く深い
水素のスペクトル線
を持つ、白や青色の恒星。
ベガ
アルタイル
が該当し、現在の分類ではA型から早期F型星までに相当する。
Secchi class I
(オリオン亜分類)
Secchi class I のサブタイプであり、スペクトル線が広いものではなく細い恒星。
リゲル
ベラトリックス
が該当し、現在の分類では早期B型星に相当する。
Secchi class II
水素のスペクトル線が弱いが、金属のスペクトル線が見られる黄色の恒星。
太陽
アークトゥルス
カペラ
が該当し、現在の分類では晩期F型やG型、K型を含む。
Secchi class III
複雑なバンドスペクトルを持つ、橙色から赤色の恒星。
ベテルギウス
アンタレス
が該当し、現在の分類ではM型に相当する。
Secchi
class
IV
1868年にセッキは
炭素星
を発見し、これを独立した分類に置いた
53
。強い
炭素
のバンドとスペクトル線を持つ赤い恒星が該当し、現在の分類ではC型とS型に相当する。
Secchi class
1877年に、セッキは5番目の分類を追加した
53
カシオペヤ座
こと座
などの輝線星が該当し、現在の分類では
Be
に相当する。1891年に
エドワード・ピッカリング
は、class V は現在の分類でのO型 (後にウォルフ・ライエ星も含む) と、惑星状星雲の中にある恒星に相当するものであると提唱した
55
セッキによる分類に用いられているローマ数字は、ヤーキスの光度階級に用いられているローマ数字や中性子星の分類に提案されているものとは完全に無関係であるため、混同しないよう注意が必要である。
ドレイパーの分類
編集
1880年代に天文学者の
エドワード・ピッカリング
が、
ハーバード大学天文台
において対物プリズム
56
法を用いて恒星スペクトルのサーベイを開始した。この研究の初期成果は、1890年に『
Draper Catalogue of Stellar Spectra
』として出版された
57
。このカタログのスペクトルの大部分は
ウィリアミーナ・フレミング
によって分類されたものである。
このカタログは、以前のセッキのIからVまでの分類をさらに細分化する手法を用いており、AからPまでの文字を用いた分類を行っている。また、他のどの分類にも合致しないものに対してはQが用いられた
58
59
恒星スペクトルの
ドレイパーカタログ
での分類
58
59
セッキ
ドレイパー
参考
, C, D
水素線が支配的
II
E,
, H, I,
, L
III
IV
カタログ中には存在しない
明るい線を持つウォルフ・ライエ星のスペクトルを含む
惑星状星雲
その他のスペクトル
MK分類に引き継がれた分類は
太字
で表してある。
ハーバード分類
編集
1897年、ハーバードの別の天文学者
アントニア・モーリ
は、セッキによる class I のオリオン亜分類を、残りの class I よりも先に配置した。これは現在の分類で言うと、A型よりも先にB型を置くことに相当する。これを行ったのはモーリが初めてであるが、彼女はスペクトル型の文字は用いず、かわりにIからXXIIまでの22種類の数字を用いた
53
60
1901年、
アニー・ジャンプ・キャノン
によってドレイパーカタログでの文字による分類が再び用いられたが、彼女は O、B、A、F、G、K、M と N、および惑星状星雲のPとその他の特徴的なスペクトルのQ以外の文字は使用せず、スペクトル型の分類を再編した。またキャノンはB型とA型の中間にある恒星に対してはB5A、F型からG型への5分の1の位置にある恒星に対してはF2Gなどとする分類を用いた
53
61
。最終的に1912年には、B、A、B5A、F2Gなどの型を、それぞれB0、A0、B5、F2などとする表記法が確立した
53
62
。これが実質的にハーバード分類の現在の形式として現在まで用いられている。
スペクトル型の文字を
記憶する方法
としては、温度が高い方から低い方へ、"Oh, Be A Fine Girl/Guy, Kiss Me!"(ああ、お上品な女の子/男の子になってキスしてください!)というものがよく知られている
63
64
。そのほか、炭素星に用いられていたR型、N型やS型を含めて "Right Now, Sweet!" と続けるもの、後年に追加された褐色矮星などのさらに低温なスペクトル型であるL型やT型を含めて "Let's Tea/Turn/Try!" と続けるものなど、様々なバリエーションがある
64
ウィルソン山の分類
編集
前後20万年の間の早期型星の固有運動
ウィルソン山
の分類として知られる光度階級が、異なる光度を持つ恒星を識別するために使用されていた
65
66
67
。この記法は、現在のスペクトル分類においても依然として使用される場合がある
68
階級
意味
sd
準矮星
矮星
sg
準巨星
巨星
超巨星
スペクトル型
編集
前後20万年の間の太陽向点(左)と太陽背点(右)周りでの晩期形星の動き
恒星の分類方法は、
生物学
における種の分類と同様に、
基準標本
に基づいた
分類
である。カテゴリーは、そのカテゴリーとその下部カテゴリーにおける1つかそれ以上の恒星と、それに伴った特徴の説明によって定義される
69
「早期」と「晩期」という用語
編集
恒星はしばしば「早期」 (early) もしくは「晩期」 (late) という表現で形容される場合がある。この場合、「早期」はより高温であることを意味し、「晩期」はより低温であることを意味する
70
文脈に依存し、「早期」と「晩期」は絶対的・相対的な意味の双方で用いられる。絶対的な用法としての「早期」の場合はO型星やB型星を指し
70
、場合によってはA型星を含む。相対的な用法の場合は同じ分類の中でも高温な恒星を指して使われ、例えば「早期K型星」とした場合はK0型やK1型、あるいはK3型程度までを指す。「晩期」も同様であり、K型星やM型星を指して「晩期型星」と呼ぶ絶対的な用法と
71
、より低温なG7型、G8型、G9型を指して「晩期G型星」と呼ぶような相対的な用法がある。
相対的な意味で用いられる場合は、「早期」はスペクトル型の文字に続くアラビア数字が小さいものを意味し、「晩期」は大きいものを意味する。さらに、数字が中程度のものに対しては「中期」 (mid) が用いられる場合もある
72
73
このあいまいな用語は、20世紀前半の恒星進化モデルを受け継いだものである。当時のモデルでは、恒星は
ケルビン・ヘルムホルツ機構
を介して重力収縮でエネルギーを生み出していると考えられていたが、これは現在では
主系列星
に対しては適用できないことが知られている。もしこのモデルが正しかったとした場合、恒星は非常に高温な「早期型」の恒星としてその一生を開始し、その後徐々に冷却して「晩期型」の恒星になる。すなわち、「早期」や「晩期」という表現は、当時の理論における恒星の一生の早期か晩期かを表現したものである。このメカニズムに基づいて
太陽
の年齢を推定すると、地球の地質記録から推定される年齢よりずっと小さいものになってしまい、恒星が
核融合反応
によってエネルギーを生み出していることが分かるとかつての恒星進化モデルは廃れていった
74
。しかし、スペクトル型に対する「早期」や「晩期」という呼び方は、これらが基づいていた理論モデルが否定された後も受け継がれた。
O型星
編集
→「
O型主系列星
」、「
青色巨星
」、および「
青色超巨星
」も参照
O5V星のスペクトル
O型星は非常に高温で極めて明るく、放射の大部分を
紫外線
の波長域で行っている。O型星は主系列星の中で最も希少な存在である。太陽の近傍にある主系列星のうち、300万個に1個 (0.00003%) の割合でO型星が存在する
注 6
20
非常に重い恒星
のいくつかはこのスペクトル型に分類される。O型星はしばしば複雑な周辺環境を持つため、スペクトルの測定が難しい。
O型のスペクトルは、かつては
He
4471 に対する He II
4541 のスペクトル線の強度で定義されていた。ここで、
波長
であり、それに続く数値の単位は
オングストローム
(Å) である。2つのスペクトル線の強度が等しくなっているものがO7と定義され、早期型になるほど He I 線が弱くなる。O3型はそのスペクトル線が完全に消えるところとして定義されていたが、現在の技術で観測すると非常に弱いスペクトル線があることが分かる。そのため、現在の定義は
窒素
のスペクトル線で、N III
4634-40-42 に対する N IV
4058 の強度比を用いている
75
O型星は支配的な吸収線を持ち、またしばしばヘリウム II の輝線と、イオン (
Si
IV、
III、N III と
III) と中性ヘリウムの顕著なスペクトル線が見られ、O5からO9に向かって強くなる。また、顕著な
バルマー線
も持つが、より晩期型のものほど強くはない。O型星は非常に重いため、非常に高温な核を持ち水素を急速に燃焼している。そのため、O型星は
主系列
段階を最初に外れる恒星である。
1943年にMKK分類法が最初に記述された際は、O型の細分類として用いられたのはO5からO9.5までのみであった
76
。MKKの分類は1971年にO9.7まで拡張され
77
、さらにO2、O3、O3.5を追加する新しい分類法が後に導入された
78
スペクトル標準
69
O7V
いっかくじゅう座S星
英語版
O9V
とかげ座10番星
B型星
編集
→「
B型主系列星
」、「
青色巨星
」、および「
青色超巨星
」も参照
NGC 4755
にあるB型星 (Credit: ESO VLT)
B型星は非常に明るく青い色をしている。B型星のスペクトルは中性ヘリウムのスペクトル線を持ち、これはB2型で最も強くなる。またある程度の水素線を持つ。
O型星とB型星
は非常に活動的で、寿命は比較的短い。そのため、これらのタイプの恒星はその寿命の間に運動学的な相互作用を起こす確率が低く、逃走星
79
を除いては形成された領域から遠く離れることはできない。
O型星とB型星の境界は、元々は
He
II
4541 のスペクトル線が消えるところで定義されていた。しかし、現在の観測装置を用いると、早期B型星でもこのスペクトル線は依然として存在していることが分かる。現在では、B型の主系列星は代わりに He I の紫のスペクトルの強度で定義されており、これはB2で強度が最大になる。超巨星の場合、代わりに
ケイ素
のスペクトル線が用いられる。Si IV
4089 と Si III
4552 線が早期B型星を示す。中期B型星では、Si II
4128-30 に対する後者のスペクトルの強度が決定的な特徴であるのに対し、晩期B型星では、He I
4471 に対する
Mg
II
4481 の強度が特徴となる
75
これらの恒星は、誕生した場所である巨大
分子雲
に伴ったOB
アソシエーション
中に発見される傾向がある。オリオンOB1アソシエーションは
銀河系
の渦状腕の大部分を占めており、
オリオン座
の明るい恒星の大部分を含んでいる。太陽系の近傍にある恒星のうち、800個に1個 (0.125%) が
B型主系列星
である
注 6
20
Be星
として知られる、重いがまだ超巨星になっていない恒星は、1つかそれ以上の顕著な
バルマー系列
での放射を持っているか、あるいは過去のある段階で持っていた主系列星であり、水素に関連した電磁放射の
系列
を持つ非常に興味深い対象である。Be星は一般的に、異常に強い
恒星風
、高い表面温度、さらに奇妙なほど高速な
自転
をして多くの質量を失っている天体として特徴付けられる
80
。B(e)星もしくはB[e]星として知られる天体は禁制線
45
の中性もしくは低階電離の特徴的な輝線を持ち、量子力学の現在の理解では通常は起きない過程が進行している。
スペクトル標準
69
B0V
オリオン座
B0Ia
アルニラム
B2Ia
オリオン座
B2Ib
ケフェウス座9番星
B3V
おおぐま座
B3V
ぎょしゃ座
B3Ia
おおいぬ座
B5Ia
おおいぬ座
B8Ia
リゲル
A型星
編集
→「
A型主系列星
」も参照
A型星のベガ(左)と太陽(右)の比較
A型星はより一般的な肉眼で見える恒星のひとつであり、白色か青白色である。A型星はスペクトル中に強い水素線を持ち、これはA0で最大となる。また電離した金属の線である
Fe
II、
Mg
II、
Si
II も持ち、A5で最大となる。
Ca
II 線の存在はこの段階で特に強くなる。太陽系の近傍にある恒星のうち、160個に1個 (0.625%) が
A型主系列星
である
注 6
20
81
スペクトル標準
69
A0Van
おおぐま座
A0Va
ベガ
A0Ib
しし座η星
A0Ia
HD 21389
英語版
A1V
シリウスA
A2Ia
デネブ
A3Va
フォーマルハウト
F型星
編集
→「
F型主系列星
」も参照
夜空で2番目に明るい恒星で、F型の巨星である
カノープス
F型星は、スペクトル中の
Ca
II のH、K線が強い恒星である。晩期F型星にかけては、電離した金属のスペクトル線において中性金属 (Fe I、
Cr
I) が増え始める。F型星のスペクトルは、弱い水素線と電離した金属の線で特徴付けられる。恒星の色は白色である。太陽系の近傍にある恒星のうち、33個に1個 (3.03%) が
F型主系列星
である
注 6
20
スペクトル標準
69
F0IIIa
しし座
F0Ib
うさぎ座
F2V
おおぐま座78番星
英語版
G型星
編集
→「
G型主系列星
」および「
黄色超巨星
」も参照
暗い黒点を持つ、G2型の主系列星である
太陽
太陽
を含むG型星は
22
、スペクトル中に顕著な Ca II のH、K線を持ち、これはG2で最大となる。水素線はF型星よりも弱いが、電離した金属のスペクトル線に加え、中性金属のスペクトル線も示す。
CH
分子のGバンドに顕著なスパイクが存在する。太陽系の近傍にある恒星のうち、およそ13個に1個 (7.5%) が
G型主系列星
である
注 6
20
G型星は、HR図上で "Yellow Evolutionary Void" に位置する恒星を含む
82
。超巨星はしばしば進化の過程でO型かB型(
青色超巨星
)とK型かM型(
赤色超巨星
)の間を行き来する。この過程において、超巨星はG型に相当する
黄色超巨星
の状態にはほとんど留まらない。これは、黄色超巨星の状態は極めて不安定であるためである
83
スペクトル標準
69
G0V
りょうけん座
G0IV
うしかい座
G0Ib
みずがめ座
G2V
太陽
G5V
くじら座
G5IV
ヘルクレス座
G5Ib
ペガスス座9番星
英語版
G8V
おおぐま座61番星
G8IV
わし座
G8IIIa
ふたご座
G8IIIab
おとめ座
G8Ib
ふたご座
K型星
編集
→「
K型主系列星
」も参照
K1.5巨星の
アークトゥルス
と、太陽、
アンタレス
の比較(アークトゥルスは中央右上)
K型星は、太陽よりわずかに低温な橙色の恒星である。太陽系の近傍にある恒星のうち、およそ12%が
K型主系列星
である
注 6
20
。K型の巨星も近傍に存在し、
ケフェウス座RW星
のような極超巨星から、
アークトゥルス
のような
巨星
超巨星
もある。一方、
ケンタウルス座
星B
のようなK型の主系列星もある。
K型星のスペクトルは、水素線が存在する場合にそれらは非常に弱く、大部分は中性金属のスペクトル線である (
Mn
I、
Fe
I、
Si
I)。晩期K型星では、
酸化チタン
の分子吸収帯が見られるようになる。スペクトル型がK型である恒星では、その周囲の
ハビタブルゾーン
内にある惑星で生命が発生する可能性が高くなる可能性があるという予測が存在する
84
スペクトル標準
69
K0V
りゅう座
K0III
ポルックス
K0III
はくちょう座
K2V
エリダヌス座
K2III
へびつかい座
K3III
うしかい座
K5V
はくちょう座61番星A
K5III
りゅう座
M型星
編集
→「
赤色矮星
」、「
赤色巨星
」、および「
赤色超巨星
」も参照
M型星は最も多数存在する恒星であり、太陽系の近傍にある恒星のうちおよそ76%がM型の恒星である
注 6
注 7
20
。しかし、M型主系列星(
赤色矮星
)は光度が低く、例外的な状況を除けば肉眼で観測できるほど明るいものは無い。知られている中で最も明るい赤色矮星は、等級が6.6のM0V型の
けんびきょう座AX星
であり、これより明るいものが発見されることは非常に考えづらい
注 8
大部分のM型星は赤色矮星であるが、
ケフェウス座VV星
アンタレス
ベテルギウス
などの銀河系内で最大級の超巨星の大部分もスペクトル型はM型である
85
。さらに、
褐色矮星
の中で大きく高温なものも晩期M型であり、通常はM6.5からM9.5の範囲にある。
M型星のスペクトルは、
酸化物
分子によるスペクトル線(
可視光線
では特に
TiO
)とすべての中性金属が見られるが、水素の吸収線は通常は見られない。TiOの吸収帯はM型星で強くなり、おおむねM5型の可視光のスペクトルで主要となる。
酸化バナジウム
(VO) の吸収帯は晩期M型で見られるようになる
86
スペクトル標準
69
M0IIIa
アンドロメダ座
M2III
ペガスス座
英語版
M1-M2Ia-Iab
ベテルギウス
M2Ia
ガーネット・スター
スペクトル型の拡張
編集
新しい種類の天体が発見され、多くの新しいスペクトル型が使用されるようになっている
87
高温で青色の恒星に対する分類
編集
大質量の明るい青色の恒星が形成されている輝線銀河
UGC 5797
88
いくつかの非常に高温で青い恒星のスペクトルには、炭素や窒素、場合によっては酸素による著しい輝線が存在する。
ウォルフ・ライエ星
編集
→詳細は「
ウォルフ・ライエ星
」を参照
ハッブル宇宙望遠鏡
による、星雲M1-67とその中心にあるウォルフ・ライエ星
WR 124
英語版
の画像
かつてはO型に分類されていたW型もしくはWR型の
ウォルフ・ライエ星
は、スペクトル中に水素線が欠如しているのが特徴である。その代わりに、高電離のヘリウム、窒素、炭素、場合によっては酸素の、幅が広い輝線に占められたスペクトルを持つ。これらの恒星の大部分は、
恒星風
によって水素の外層が吹き飛ばされ、高温のヘリウム殻がむき出しになっている死にゆく超巨星であると考えられている。ウォルフ・ライエ星のスペクトル型は、そのスペクトルと外層における窒素と炭素の輝線の相対的な強さによってさらに細分されている
49
ウォルフ・ライエ星のスペクトルの範囲は以下の通りである
89
WN
49
スペクトルが
III-V と
He
I-II のスペクトル線で占められているもの
WNE (WN2 から WN5、WN6の一部)
より高温、もしくは「早期」(early)
WNL (WN7 から WN9、WN6の一部)
より低温、もしくは「晩期」(late)
WN10、WN11
WN型の拡張で、Ofpe/WN9型の恒星に使用される場合がある
49
水素の輝線が見られるものには "h" が使用され (例:WN9h)、水素の輝線と吸収線双方が見られる場合は "ha" が使用される (例:WN6ha)
WN/C
WN型のうち強い
IV 線を持つ、WN型とWC型の中間のもの
49
WC
49
スペクトル中に強い
II-IV 線を持つもの
WCE (WC4 から WC6)
より高温、もしくは「早期」
WCL (WC7 から WC9)
より低温、もしくは「晩期」(late)
WO (WO1 から WO4)
強い
VI 線を持つもの。極めて稀
惑星状星雲の中心星 (central stars of planetary nebulae, CSPNe) の大部分はO型のスペクトルを持つが
90
、およそ10%は水素が欠乏しており、ウォルフ・ライエ星と同様のスペクトルを示す
91
。これらは低質量星であり、大質量のウォルフ・ライエ星と区別するため、スペクトル型を表記する際は [WC] のように角括弧を用いる
91
。このような天体の大部分のスペクトル型は[WC]型であり、いくらかは[WO]型であるが、[WN]型は極めて稀である。
Slash stars
編集
→詳細は「
en:Slash star
」を参照
スペクトルがWN型に似た線を持つO型星は "
slash stars
" と呼ばれる。名称の "slash" は、スペクトル型を表記する際に "Of/WNL" のようにスラッシュを用いて表記されることに由来する
75
このスペクトルを持つ、より低温で「中間的」な "Ofpe/WN9" と分類される二次分類が発見されている
75
。これらの恒星はWN10やWN11とされる場合もあるが、この分類は他のウォルフ・ライエ星との進化の違いが分かってくるに連れて好まれなくなった。最近のより希少な恒星の発見により slash stars の範囲は O2-3.5If
/WN5-7 にまで拡張された。これらは元々の slash stars よりもさらに高温なものである
92
強磁場を持つO型星
編集
強い磁場を持つO型星が示すスペクトルに対しての分類も存在する。このような恒星に与えられるスペクトル型は "Of?p" である
75
93
低温な赤色・褐色矮星
編集
→詳細は「
褐色矮星
」および「
赤色矮星
」を参照
新しいスペクトル型である
は、低温の天体の赤外線スペクトルを分類するために作られたものである。これらのスペクトル型は、可視光線では非常に暗い
赤色矮星
褐色矮星
を含む
94
エネルギーが重力収縮のみによっている褐色矮星は時間の経過とともに冷えていくため、晩期のスペクトル型へと進化していく。褐色矮星はM型のスペクトルを持つ天体として誕生し、冷えることによってL型、T型、Y型へと進化する。この変化は質量が軽い褐色矮星ほど速く、最も重い部類の褐色矮星の場合は冷却が遅いため、宇宙年齢の間にはY型、場合によってはT型にも進化することはできない。これにより、異なる L、T、Y型のスペクトル型を持つある質量と年齢の褐色矮星では有効温度と光度の間に解決できない重複が生じるため、温度や光度の明確な値を与えることができない
19
L型星
編集
L型矮星の想像図
L型矮星はM型星よりも低温であり、使用されていないアルファベットの中でMに最も近いものがLであるためにこの文字が選ばれた。これらの天体の一部は水素の核融合を起こすのに十分な質量を持っており、したがってそのような天体は恒星に分類される。しかし大部分は
恒星より軽い
質量を持つ褐色矮星である。これらの天体は非常に暗い赤色を示し、
赤外線
の波長で最も明るい。L型星の大気は
金属水素化物
アルカリ金属
が主要なスペクトルを占める程度に低温である
95
96
97
巨星では表面重力が小さいため、
TiO
VO
を含む凝縮物は生成されない。そのため、孤立した環境では矮星よりも大きなL型星は決して形成されない。しかし恒星の衝突を介してL型のスペクトルを示す超巨星が形成される可能性はある。その一例が
いっかくじゅう座V838星
であり、
高輝度赤色新星
の増光を起こしている最中にL型のスペクトルを示したことが報告されている
98
T型星:メタン矮星
編集
T型矮星の想像図
T型矮星は、表面温度が約 550-1300
の低温な褐色矮星である。これらの放射のピークは赤外線の波長であり、スペクトル中では
メタン
の特徴が目立つ
95
96
最近の研究が正しければ、T型とL型の天体は他のすべての型を合わせたものよりも一般的な存在である。褐色矮星は宇宙の年齢の数倍と非常に長寿命であるため、破壊的な衝突が無い限りこれらの分類の天体の数は増加を続けることになる
99
数多くの
原始惑星系円盤
の研究によると、銀河系内の恒星の数はこれまでに想定されていたよりも数桁多いことが示唆されている。これらの原始惑星系円盤はお互いに競い合うような関係にあるとする理論が提唱されている。最初に形成されたものは
原始星
となり、これは近傍にある他の原始惑星系円盤を破壊してガスを剥ぎ取ってしまう。その犠牲となった原始惑星系円盤はおそらくは主系列星やL、T型の褐色矮星となり、これらは暗いために観測が難しいものとなる。
Y型星
編集
→「
準褐色矮星
」も参照
Y型矮星の想像図
Y型のスペクトルを持つ褐色矮星はT型のものよりもさらに低温であり、T型とは定性的に異なるスペクトルの特徴を示す。2013年8月の時点では、17個の天体がY型に分類されている
100
。これらの褐色矮星は理論的にモデル化され
101
WISE
による観測では40光年以内の距離に発見されているものの
87
102
103
104
105
、十分に定義されたスペクトル分類法やその原型は存在しない。それでも、いくつかの天体をスペクトル型Y0、Y1、Y2に分類しようという提案が行われている
106
Y型に属すると考えられる天体のスペクトルは、1.55
µm
付近に吸収の特徴を持つ
107
。Delorme らによる論文では、この特徴は
アンモニア
の吸収によるものであることが示唆されており、またこの特徴の有無をT型とY型を特徴づけるものとして取り扱うことが提案されている
107
108
。実際、このアンモニアの吸収による特徴は、この分類を定義するために採用された主要な基準である
106
。しかしこの特徴は水とメタンの分子による吸収と区別することが難しく
107
、別の研究者らはY0型というスペクトル型を割り当てたのは早計であると述べている
109
Y型のスペクトルを持つと考えられる中で最も晩期の褐色矮星は
WISE 1828+2650
で >Y2型である。この天体の有効温度は 300 K 程度と推定されており、人間の体温に近い温度である
102
103
110
。しかし
年周視差
の測定からは、この天体の光度は温度が 400 K 程度を下回る天体としては矛盾する値であるとの指摘もある。2020年の時点で知られている中で最も低温なY型矮星は
WISE 0855-0714
で、約 250 K である
111
Y型矮星の質量は9-25
木星質量
の範囲であるが、若い天体の場合は木星質量を下回る可能性もある。したがってY型の天体は、
国際天文学連合
が現在定めている褐色矮星と惑星の境界である、重水素の核融合が発生する限界質量の13木星質量をまたいで存在していることを意味する
106
晩期の炭素星の巨星
編集
炭素星
は、
トリプルアルファ反応
によるヘリウムの核融合の副産物である炭素がスペクトル中に見られる恒星である。炭素の存在量が増加し、また並行して
s過程
による重元素生成が起きるため、これらの恒星のスペクトルは通常の晩期のスペクトル型であるG、K、M型星とは大きく異なったものになる
112
。炭素が豊富な恒星に対応するスペクトル型はSとCである。
これらの巨星は炭素を自身で生成していると推定されるが、この分類にある一部の恒星は二重星であり、現在は
白色矮星
となっている伴星が炭素星であった時に物質が輸送されたことによって、炭素の多い奇妙な大気を持つようになったと推定されている。
C型:炭素星
編集
→詳細は「
炭素星
」を参照
炭素星
ちょうこくしつ座R星
とその印象的なスパイラル構造の画像
元々はR型星やN型星と分類されていたこれらの恒星は、炭素星としても知られている。これらは寿命の終わりに近い赤色巨星であり、大気中に炭素の超過が見られる。古いR型とN型の分類は、通常の分類の中期G型から晩期M型までに平行して用いられていた。これらは炭素星を分類するための新しい型であるCへと統一され、かつてのN0型はおおむねC6型に対応する。低温の炭素星の別の細分にはC-J型があり、スペクトル中に
12
CN
に加えて
13
CN の強い特徴が存在することによって特徴付けられる
113
。主系列段階の炭素星もいくつか知られているが、炭素星として知られているものの圧倒的多数は巨星か超巨星である。C型星にはいくつかの細分類が存在する。
C-R
かつてはR型に分類されており、一般的な分類での晩期G型から早期K型に対応する炭素星である。
C-N
かつてはN型に分類されており、一般的な分類での晩期K型からM型に対応する。
C-J
低温なC型星の細分類であり、
13
を多く含む。
C-H
C-R型星に類似する
種族II
の恒星。
C-Hd
水素が欠乏した炭素星であり、
CH
英語版
のスペクトル帯を持つ晩期G型超巨星に類似する。
S型星
編集
→詳細は「
S型星
」を参照
S型星は、M型星と炭素星を連続的に繋ぐ位置づけの恒星である
114
。S型星の中でM型星に最も近いものは一酸化ジルコニウム (ZrO) の吸収帯を持ち
、これはM型星での
酸化チタン
(TiO) の吸収帯に似たものである。一方で炭素星に最も近いものは強い
ナトリウム
のD線と弱い
のスペクトル帯を持つ
115
。S型星は
ジルコニウム
やその他の
s過程
で生成された元素の存在量に超過が見られるほか、M型星や炭素星よりも炭素と酸素の存在度が類似している。炭素星と同様に、知られているS型星のほぼすべては
漸近巨星分枝
星である
116
スペクトル分類は、アルファベットのSと0から10までの数字の組み合わせからなる。この数字は恒星の温度に対応しており、M型巨星に用いられている温度スケールに近似的に従う。最も一般的な型はS3型からS5型である。一般的ではないS10型という分類は、
はくちょう座
の光度が極めて極小になっている時にのみ使用される。
S型星は、基本的な分類の後にその組成を示す豊富な分類によって細分化される。例えば、S2,5、S2/5、S2 Zr4 Ti2、S2*5 である。コンマの後に続く数字は1から9までの数値を取り、一酸化ジルコニウム (ZrO) と酸化チタン (TiO) の比に基づいて決められる
115
。スラッシュの後に続けて数字を書く分類はより最近生まれたものだがあまり一般的ではなく、酸素に対する炭素の比率を示す数値である。1から10の間の数値を取り、0がMS星となるように決められている
115
。また、3番目の例のように、ジルコニウムとチタンの強度を陽に書き表す場合もある。アスタリスクに続けて数字を書く分類も時折見られ、これは1から5のスケールで一酸化ジルコニウムのスペクトル帯の強度を示している。
MS型とSC型
編集
M型とS型の間での境界にある型はMSという分類が与えられる。同様に、S型とC-N型の境界にあるものにはSC型もしくはCS型という分類が用いられる。漸近巨星分枝に位置する炭素星は、年齢が進むにつれて炭素の存在量が増加し、M → MS → S → SC → C-N という系列をたどるという仮説が提唱されている。
白色矮星のスペクトル分類
編集
→詳細は「
白色矮星
」を参照
ハッブル宇宙望遠鏡
で解像された
シリウス
A(中央)と、DA2型の白色矮星であるシリウスB (左下)
D型という分類は、白色矮星に対して現在用いられているスペクトル分類である。白色矮星は、低質量の恒星がもはや核融合を継続できなくなり、惑星程度の大きさにまで収縮してゆっくりと冷却している状態にある天体である。"D" は
縮退
(degenerate) から採られている
。D型は、さらに DA、DB、DC、DO、DQ、DX、DZ に分割される。これらの文字は他の恒星への分類として用いられているものとは関連しておらず、白色矮星の観測可能な外層や大気の組成を示すものである。
白色矮星の分類は以下の通りである
117
118
DA
水素が豊富な大気もしくは外層の存在が、強い水素の
バルマー系列
のスペクトル線によって示されているもの。
DB
ヘリウムが豊富な大気の存在が、He I (中性ヘリウム)のスペクトル線によって示されているもの。
DO
ヘリウムが豊富な大気の存在が、He II (一階電離したヘリウム)のスペクトル線によって示されているもの。
DQ
炭素が豊富な大気の存在が、炭素原子もしくは分子のスペクトル線によって示されているもの。
DZ
金属豊富な大気の存在が、金属のスペクトル線によって示されているもの(使われなくなった白色矮星のスペクトル型であるDG、DK、DMを統合したもの)。
DC
上記の分類のうちいずれのスペクトル線の強い特徴も示さないもの。
DX
上記の分類のどれかに分類できるほどスペクトル線が十分に明確ではないもの。
アルファベットでの分類の後に続く数字は、白色矮星の表面温度を示すものである。この数値は、
eff
を白色矮星の
有効温度
とした際に、50400/
eff
を丸めたものとなる。温度の単位はケルビンである。当初はこの数字は一桁の1から9までの数字に丸められていたが、最近では1未満や9より大きい数字のほか、小数の値も使用され始めている
117
119
上記のスペクトルの特徴を2つ以上示す白色矮星のために、2つ以上の文字が使用される場合もある
117
白色矮星のスペクトル分類の拡張版
117
DAB
中性ヘリウムのスペクトル線を示す水素・ヘリウム豊富な白色矮星
DAO
ヘリウムイオンのスペクトル線を示す水素・ヘリウム豊富な白色矮星
DAZ
水素が豊富な金属の多い白色矮星
DBZ
ヘリウムが豊富な金属の多い白色矮星
白色矮星に対しては、スペクトルの特性を示すための他のタイプの恒星とは異なる記号が用いられる。
文字
スペクトルの特徴
検出可能な偏光を伴った磁場を持つ白色矮星 Magnetic white dwarf with detectable polarization
輝線を持つ白色矮星
検出可能な偏光を伴わない磁場を持つ白色矮星
変光星
PEC
スペクトルに特徴が存在する
恒星以外のスペクトル分類
編集
キャノンによってドレイパーのスペクトル分類から残されたスペクトル型である
が、一部の恒星ではない天体に対して時折用いられる。P型は
惑星状星雲
の中にある恒星であり、Q型は
新星
に対して用いられる
53
120
恒星の残骸
編集
→詳細は「
中性子星
」、「
ブラックホール
」、および「
異種星
」を参照
恒星の残骸は、恒星の死に伴って形成される天体である。この分類には白色矮星も含まれており、白色矮星へのスペクトル型であるD型の分類手法が他のものとは大きく異なることからも分かるように、恒星ではない天体をMK分類に適合させることは難しい。
MK分類が基礎としているヘルツシュプルング・ラッセル図は本質的に観測的なものであるため、恒星の残骸である天体は図中に容易には図示できないか、あるいは全く図示できない場合もある。年老いた
中性子星
は比較的小さく低温であり、ヘルツシュプルング・ラッセル図上に表すとするとはるか右側に位置することになる。
惑星状星雲
は動的な天体であり、その前駆体となった恒星が
白色矮星
へと遷移していくにつれて急速に明るさを減少させる傾向にある。もし図中に惑星状星雲を示すのであれば、図の右上象限の右側に位置することになる。
ブラックホール
は自身では可視光線を放出しないため、図中には表すことができない
ローマ数字を用いた中性子星の分類系統が提案されている。I型は冷却率が低い軽い中性子星、II型はより高い冷却率を持つ重い中性子星、III型は高い冷却率を持つさらに重い中性子星(
異種星
の候補天体)である
121
。中性子星の質量が大きいほど、
ニュートリノ
の流束が大きくなる。これらのニュートリノは非常に多くの熱エネルギーを持ち去るため、孤立した中性子星の温度はわずか数年のうちに数十億
から百万K程度にまで低下する。中性子星の分類において提案されているこの分類系統は、初期の恒星の分類におけるセッキのスペクトル階級やヤーキスの光度階級とは異なるものである。
置き換えられたスペクトル分類
編集
20世紀半ばまで、一般的ではない恒星に対して用いられていたいくつかのスペクトル型は、恒星の分類系統が改定される間に置き換えられた。それらのいくつかは、恒星のカタログの古い版にまだ見られる場合がある。かつて使用されていたRやN型は、C-RやC-NとしてC型の中に組み込まれている。
恒星の分類と居住可能性、生命の探査
編集
→「
惑星の居住可能性
」も参照
人類は最終的にはあらゆる種類の恒星周りの居住可能な領域に移住できるようになる可能性がある。ここでは、太陽以外の恒星周りでの生命誕生の可能性について述べる。
恒星の安定性、光度、寿命は、すべてその恒星周りの居住可能性に関する要素である。我々は周囲に生命を持っている恒星は一つだけしか知らず、それは重元素が豊富で明るさの変動が小さいG型星、すなわち太陽である。また、多くの恒星系とは異なり、恒星ただ一つからなる系であるという要素もある(
惑星の居住可能性
の連星系の節も参照)。
これらの制約と、生命を持つ経験的な例が1つしか存在しないという問題から、現在我々が知るような生命を持つことが可能であると予想される恒星の範囲は、いくつかの要素によって限定される。地球を基準として考えると、主系列星のうち太陽の1.5倍よりも重い恒星(スペクトル型O、B、Aのもの)は高度な生命が発達するためには進化が早すぎる。逆の極限として、太陽の半分未満の質量を持つ矮星(M型の恒星)の場合は、その
ハビタブルゾーン
内で惑星は潮汐的に固定される可能性が高くなり、別の問題が発生する
122
。赤色矮星周りでの生命に関しては多くの問題があるものの、これらの存在個数が非常に多く寿命も長いことから、多くの天文学者はこれらの系における生命のモデル化を続けている。
これらの理由により、
NASA
ケプラー
による
太陽系外惑星
探査ミッションでは、スペクトル型がAの恒星よりも軽く、M型よりも重い近傍の主系列星周りのハビタブル惑星を探査の対象としていた
122
脚注
編集
脚注の使い方
注釈
編集
ただしVバンドは色としては緑に対応している
13
これは一般的に青い恒星とされている
ベガ
を、「白」の基準として用いた場合の相対的な色を表す。
主系列星の時点での値。
厳密には、白色矮星はもはや「生きた」恒星ではなく、消滅した恒星の「死んだ」残骸である。これらの天体には、元素を燃焼している「生きた」恒星とは異なるスペクトル型を用いる。
Ap星とBp星
に対して用いられる場合は、これは異常に強い金属のスペクトル線を持つことを意味する。
これらは、絶対等級が16よりも明るい恒星での割合である。この明るさの下限を下げると一般にM型星を増やすことになるため、早期型星の割合はさらに低下する。
主系列星だけではなくすべての種類の恒星を含めた場合、この割合は78.6%に上昇する。
理想的な状況において肉眼で見ることのできる限界の等級は、典型的には6.5とされる。
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関連項目
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天体望遠鏡
客星
激変星
に対する古代中国での呼称。
恒星進化論
ジョンソンのUBVシステム
恒星
恒星進化論
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不安定帯
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彩層
コロナ
恒星風
恒星風バブル
星震学
エディントン光度
ケルビン・ヘルムホルツ機構
特徴
命名
恒星力学
有効温度
運動星団
恒星磁場
等級
絶対等級
太陽質量
金属量
恒星の自転
UBV色
変化性
恒星系
連星
接触連星
共通外層
多重星
降着円盤
惑星系
太陽系
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